両手一杯にひまわりの花を抱えたクロノの姿は、もちろんながら彼を良く知る人間にとってはとても異常に見えた。 さらに彼が浮かべた笑顔は、周りの人間に不安を抱かせるのに余りあるものだった。 彼が物―ひまわりだが―を落として歩く姿も珍しかった。 アースラの艦橋に居たなのはに向かって、クロノが一直線に歩いていた。 「どうしたの? こんなにたくさんのひまわり」 すぐ傍に来たクロノに、なのはは目を丸くして問いかける。 その問いに、クロノは頷いて見せた。 「なのはの世界で見つけてな。ちょっと道ばたに咲いているのをしばらく見ていたら、 草むしりをしたらくれるとそこを管理しているお爺さんに言われて手伝ってきた」 よくよく見ればクロノの姿はどろだらけで、頬にも土がついている。 汚れを落とそうと手を伸ばしたなのはの髪に、唐突にやや小振りなひまわりの花をクロノが挿した。 「お、重い…」 未だ見たことのないほどのクロノの笑顔に真っ赤になりながらも、 けれど、ひまわりの重さになのはは首を傾かせた。 「なのはには、ひまわりが良く似合う」 なのはは、髪に飾られたひまわりに手を伸ばし取ろうとする。 その姿に向けて、クロノは告げた。 「なのはは僕の太陽だからな」 傍にいたはやては大爆笑して床を転げまわり、フェイトが壁際で肩を震わせていた。 ユーノが顔を引きつらせながらなのはを見ると、なのはは真っ赤な顔のままだった。 「どうしよう。時々クロノ君が凄く可愛いの…!」 心のそこで、ユーノは『馬鹿だ!』と思ったが、言わないことにした。 元ネタ:親指からロマンス / 白泉社 椿いづみ